部長室を出る。


企画事業部の前を足早に通り過ぎる。見てはいけないと思いながら、目の端でちらりと事務室内に視線を走らせた。


デスクが並ぶ事務室。…恭佑の席は中央付近にある……そこに彼の姿が無いことに安堵した。


─部長室に来たことが見つかったら……


そこを通り過ぎたところで、事務室から離れたところに見える、立って数人と打ち合わせをしている恭佑を見つけてしまった。


気づかれませんように。



そう思いながらそっと通り過ぎようとしたとき、恭佑が振り向いた。


──気づかれた……!


合ってしまった目をそらす。藍香の方を見つめる視線を振り切るようにその場を通り抜けた。