夜を越える熱

……あんなキスをした後で話す言葉が見つからない。


そこからもうすぐの藍香の自宅マンションまでの道のりを言葉もなく歩いた。

エントランスまでたどり着き、お互いの足が止まる。



「……藤崎さんに仕事の報告したの」

急に訊かれた。

「…してない。けど明日、課長に話しをしてから報告に行く」

「じゃあ今日は」


今日は何しに行ったのか、という意味だ。

「今日は……雑談しただけ。明日もう一度来いって…」

「雑談?………仕事の用でもなく部長に入って?何を話したの?」


「……、顔を見たくて来ましたって……」

正直にそう話をしてしまった。


「そうか」


今井は黙って目を閉じた。それからゆっくりと端正な瞳を開く。