「じゃ、自由に何か食べましょうか」

美桜がそう言うと、そうですね、と宮地も立ち上がり藍香もそれに続いた。


料理を取って戻ってくるとテーブルには誰もいない。見渡すと美桜と宮地が楽しそうに話をしながらまだ料理を選んでいるのが遠目に見えた。


「来なくて良かったよねー。これ、完全に。俺とあんた、要らない感じでしょ」


ふいに皿がテーブルに載せられ、目の前に吉田が戻ってきた。


「どうしても来てくれって宮地が言うから、おごる条件で来たけど。もう帰りたいよねえ」


相変わらず面倒そうに吉田は言う。さっきTシャツを見ていて睨まれたかと思ったが特に怒っているわけでは無さそうだ。


「あ、俺恋愛に興味ないから。付いて来ただけ。こないだも。ごめんねー」


全然悪いと思っていなさそうにそう言いながら吉田は焼いた肉をつついている。


「いえ、私も付いて来ただけなので」

吉田の雰囲気にあ然としながら答えると、あんたもさっさと食べたら、と言われてしまった。


「こういう時にさー、俺って丁度いい要員なんだって。何しろ女に興味がないから連れてきてもライバルにならないってコトで」


よく食べるなあ、と思いながら食べるように言われた藍香もパスタを口にする。


「さっさと食べて帰ろ。なあ、あんた、せっかくだし面白い話してよ。黙ってちゃつまらないし。そうだ、こっちのテーブル行こう。宮地とあの子と同じテーブルとか勘弁してよ」


一人でそう言うと吉田は2つ離れたテーブルに皿ごと移動してしまった。


「ええ、ちょっと吉田さん…ここ、予約とかの席かもしれませんよ。勝手に使ったらだめじゃないですか?」



思わず藍香も皿を持って来てしまったが、そう注意すると吉田は食べながらひらひらと手を振った。

「バカ。予約席の札がないテーブルでしょうが。見りゃ分かる。他にも席いくらでも空いてるんだし、必要ならテーブルの追加料金払えばいい話でしょ。金は宮地が払うから安心して」