チトセがハッとしてそのブローチを大切そうに真っ白なハンカチに包み、ポケットにしまう。
そのポケットを優しくなでる。私も撫でられたような心地になるが気の所為だろう。

チトセは微笑みを戻し

「教会に向かいましょう緋女様」

と声をかけてくる。まぁ、チトセがいいならいいのだけれど。

と、廊下を歩いていると透李が向こうから歩いてきたので外に着いているように命じる。
透李は

「我に命令だと?何を偉そうに」

などといっていたが、事実私は王子様なんだがと言うより先に私の後ろに周り、いつも護衛としてついてくる時の位置に陣取った。
フログメントも

『素直ではないな、草ヶ谷透李』

などと透李をからかっていた。