「…」

「緋女様?どうなさいました?」

「…野菜スープ」

「食べましょうね、緋女様」

チトセが無慈悲にいってくる。苦手と知っているのに酷い。そう思い、私は涙目でチトセを睨む。するとチトセはニコッと笑って言う。

「緋女様。立ってくださいませ」

「え?」

私が言われるがままに立つと、チトセが席につき、私はひょいっとチトセに抱っこされ、膝に座らされた。

「チトセっ」

「これで逃げられませんね、緋女様。はい、あーん…」

チトセがスプーンで野菜スープを掬って私の口に近づける。私が口を空けずにいるとチトセが耳元で囁く。

「おや?緋女様はあーんより、わたくしからの口移しがお好みですか?」

そういうとチトセは野菜スープを口に含み、顔を近づけてくる。

「た、食べる!食べれば良いのだろう!」

私が焦ってそういうとチトセは野菜スープを飲み下し、もう一度スプーンで野菜スープを掬う。

「どうぞ、緋女様」

「…うん、美味しい」

「ふふ、食わず嫌いはいけませんよ」

…と私とチトセがさながら少女漫画のヒロインとヒーローのようなやり取りをしていると、隣ではあむと透李が、主と卓を共にしていることをさほど気にしていない様子でおなじことをしていた。……あむがヒーロー側で。

「我は自分で食すといっているだろう!」

「おらちが食べさせてあげますってー」

「やめろ!んっ……。無理矢理匙を我の口にねじ込むな!」

「美味しいっすか?」

「あ、味は悪くないが……!」

私はこの2人、いつになったら付き合うんだろう、はよ付き合えよ。と思いつつ、チトセの膝の上で朝食を食べ終え自室に戻った。