チトセに着替えを手伝ってもらい、まずは朝食だ。
ダイニングに行き、チトセに促され席に着いた途端、パタパタという軽い足音とドタドタっと足がもつれそうになっているような足音が聞こえる。

「おはようございます、ひめ様!」

「おい!離せ蜘蛛女!」

「その前に朝の挨拶っすよ、透李(とうり)っち」

「貴様が無理やり……!」

『その辺にしておけ、草ヶ谷(くさがや)透李。おはよう緋女殿下』

「…フログメントに感謝しろよ、蜘蛛女。…目覚めたか我が主、焔の王子よ」

明るい蜘蛛女。女郎蜘蛛の妖怪で王宮カウンセラーの蓮糸(はすいと)あむ。人族でありながら神に愛され神の加護を持ちし王宮騎士の草ヶ谷透李。さらにその透李の肩で透李を窘める透李の使い魔。青い体が宝石のよう。アパタイトフロッグのフログメントだ。

「おはよう、あむ、透李、フログメント」

「おはようございます。透李、緋女様の前で言い争いなどやめなさい。失礼ですよ」

「そうは言うが…そもそもこの蜘蛛女が我の領域に侵入し、我に突然業火に焼かれし球体を突きつけて来たのだ!」

「フログメント、翻訳を」

『草ヶ谷透李は、そうは言っても…そもそも蓮糸あむが僕の部屋にはいってきて、僕に突然太陽の光を浴びせてきた。というようなことを言っている。カーテンでも開けられたのではないか』

「透李っちがいつまでもねてるからっすよ」

「我は貴様らが泡沫の夜へ落ちた後もフログメントと共に神と語らっているのだ」

透李が何やら自分に酔った表情になった所で、朝食が運ばれてくる。
ピザトーストと野菜スープという軽めの朝食だが…私は野菜が大の苦手だ。