チトセ、透李、ねるまを連れて玄関をでると、誰かとぶつかった。

「きゃっ!」

「わっ!」

「おっと…しっかり前を向け、炎の王子。貴様もだぞ深海の王子」

私はすぐ後ろにいた透李に抱きとめられたが、相手は尻もちを付き、手に抱えていた紙袋から大量の野菜をこぼす。

「ごめん緋女!ええっと…草ヶ谷さんもごめんね?」

炎の国の敵対国家、水の国の第2王子天水 燈蛍(あまみず あかり)だ。彼は敵対国家の王子でありながら今、兄と険悪らしく、私の国の庭師として働いている。
元々家庭菜園やガーデニングが趣味だからそこそこ楽しんでいるようだ。今日もたくさん野菜が収穫出来たから葉月に持っていく途中だったのかもしれない。

「じゃがいもですか?」

チトセが燈蛍にきく。燈蛍はこぼした野菜を、拾いつつ、

「うん!沢山できたし、大きいサイズと小さいサイズはすぐ食べないと悪くなるから持ってきたんだ」

と優しく笑う。

「緋女もじゃがバターとか好きだよね?他にはじゃがいも料理は何が好き?カレー?マッシュポテト?ジャーマンポテト?日本国の肉じゃがもいいね!」

燈蛍が話しかけてくるが、チトセがスっと手で制し、透李はカイトシールドを構え

「近づくな」

と威圧する。

「あはは、信用ないなぁ…。僕は緋女と仲良く話したいだけなんだけどなぁ」

燈蛍はよく働いてくれるが、敵対国家の王子とだけあって未だに1ミリも信用されていない。

「毒味します」

「毒なんて……毎回入ってないでしょ?緋女を殺す気なんて1ミリもないよ!」

チトセは抗議する燈蛍を無視し、紙袋からじゃがいもを1つ奪うと生のまま口に運ぶ、少しじゃがいもとは思えない咀嚼音が響く。チトセは食べ終わると

「大丈夫ですね。葉月に渡したら速やかに厨房から出てくださいね。食堂に近づいた痕跡があれば水の国諸共跡形もなく消します」

とたっぷり脅してから、私に「参りましょう」と促した。