そして人並みの中に、悠真君を見つけた。

見間違うはずがない。

あれは、悠真君だ。

「悠真君!」

手を挙げたけれど、私に気づいていない。

私は、押し寄せる人並みの中、悠真君の元へ歩み寄った。


そして、もう少しで悠真君に、手が届きそうな時だ。

「悠真。」

栞さんの声がした。

驚くと、駅の前で栞さんが、悠真君を待っている。

「迎えに来なくていいって、言ったのに。」

「いいの。私が来たかったんだから。」

仲の良さそうな夫婦。

しかも、お互いスーツを着ている。

そこには、私が知らない日常があった。


「帰ろう。」

私はそう呟いた。