彼女は、似ているのだ。

 エリオットが、ここへ逃げてきた元凶──兄のアルフォンスと。

 どこにいたって、なにをしたって、出来の良い兄と比較された。

 歳の離れた弟を溺愛する兄は、エリオットに「おまえはおまえで良いんだよ」と言ってくれたけれど、周囲はそれを許さない。

 代わる代わるやってくる家庭教師たちは、いつもエリオットを見てため息を吐いた。

 出来の良い兄に期待している両親は、エリオットに期待も興味も抱かなかった。
 
 無関心。

 それが一番、適当な言葉だろう。

 でも、それも仕方がないことなのだ。

 だってエリオットは、義務で生まれてきた子どもだから。