ふと目の前にある店の看板を見れば、『ミリーレデルのフクロウ百貨店』と書かれている。

 ああそうだ、とエリオットは思った。

(彼女の名前は、ミリーレデル。シュエット・ミリーレデルだった)

 彼女はたいてい「せんせい」と呼ばれていたから、名前をすっかり忘れていた。

 彼女のことをシュエットと呼ぶのは、よく一緒にいた女子二人くらいだったように思う。

 エリオットが彼女を知ったのは、ミグラテール学院の五年生の時だった。

 せっかく入った学校にもなじめず、ただ一人、時間を持て余していたあの時期。

 彼女はエリオットの目の前を、通り過ぎていった。