(そんなネタみたいな話、現実にはあり得ない)

 首を振って、思い浮かんだすてきな出会いを打ち消す。

 そうしてシュエットはどこか寂しげにため息を吐いて、 

「……あら?」

 と、ミリーレデルのフクロウ百貨店の前に立って、こちらを見上げる誰かを見つけた。

 春の夜風に吹かれて、目深に被った暗い色合いのローブが揺れている。

 ローブには金の糸で刺繍が施されていて、三階からでも高級品であることがうかがえた。