楽しげな子供の声が聞こえる。

 つられるようにベランダから階下に目を落とすと、親子が仲良く手を繋いで歩いていくのが見えた。

「幸せそう……」

 学校を卒業して早々に結婚した友人たちはみんな幸せそうだけれど、一方で、会えば旦那の悪口大会になるのもしばしば。

 読んだ本の一節に『結婚は人生の墓場である』なんて書いてあって、結婚イコール幸せというわけでもないのだな、と幸せな結婚を夢見ていたシュエットが、ほんのちょっぴり残念な気持ちになったのは、つい最近のことである。

「でもやっぱり、幸せそうな家族を見ているといいなぁって思っちゃうわ」

 たとえ、その先にあるのが旦那の悪口大会でも、墓場だとしても。いつかは自分も、と夢見ることは自由だろう。

「多くは望まないわ。ゆっくりと穏やかで、優しい家庭をつくれたら。それだけで、いいの」

 だって、長女だから。

 もう口癖になってしまったジンクスを言い聞かせるように呟いて、シュエットは手すりにもたれた──その時だった。