この国は魔力に頼りきっている。

 魔導式のアイテムで溢れ便利ではあるが、シュエットのような人には生きづらい国だ。

 ページをめくると、その魔術を使ったのが、ムウェト・レヴィの父親であるトログロディット侯爵である、と書いてあった。

「伯父様の父親が、トログロディット侯爵様?」

「ああ、ムウェトはトログロディット侯爵がよそで生ませた子供だ。認知していないから非嫡出子なのだが……しかし侯爵は、彼のことをかわいがっていたようだな。どうにかして貴族にしてやりたくて、ジャキャス・レヴィと婚姻を結ばせた」

「伯母様と……」

「それだけで満足すれば良かったのだが、ジャキャスの方がな。彼女は自分が叶えられなかった王族との婚姻を娘にさせようと、あれこれ画策していた。そんな時に、ある事が起こったんだ」

「ある事?」