一階では、王宮のものらしい馬車が、シュエットを待ち構えていた。

 物々しい様子に、ペルッシュ横丁の人々が遠巻きに見ている。

 その中にカナールを見つけたシュエットは助けを求めようとしたが、近衛騎士に素早く馬車へ押し込まれてしまい、叶わなかった。

 日も沈み、あたりは暗くなっている。

 はっきりと見えなかったが、シュエットを乗せた馬車は確かに、王宮へと向かっているらしい。

 見覚えのある建物のシルエットが流れていく様子を見遣りながら、シュエットは「どうして」とつぶやいた。

 ピヴェール公爵への侮辱罪。

 それはどう考えたって、シュエットがエリオットを拒否した件だろう。

 愛は憎しみによく似ていると言うが、エリオットはシュエットに拒否されたことで、彼女を憎むようになってしまったのだろうか。