ほうきを握りしめて、重苦しい気持ちを吐き出すように息を吐く。と、その時だった。

 カランコロンと、入り口のドアベルが鳴る。シュエットは振り向きざまに、

「ごめんなさい、もう閉店なんです」

 と言った。

 入ってきた男は、王宮の近衛騎士だった。

 深緑色の騎士服に、革のブーツ。腕には階級を示す腕章がつけられている。

「あの……?」

 近衛騎士は、王族を守るのが仕事だ。

 シュエットのような庶民の前に、姿を現すことはめったにない。

 戸惑うシュエットに、近衛騎士はとんでもないことを言ってきた。