フクロウたちを帰したら、次は掃除。

 ガランとした店内を見つめ、シュエットは憂鬱そうに顔をしかめた。

 掃除は苦手だ。でも、やらないと衛生的によろしくない。

 ゆらりと亡霊のように動いて、シュエットはほうきを手に取った。

 掃除が苦手だというシュエットに、エリオットはいろいろコツを教えてくれた。

 上から下へ、奥から手前へ。比較的綺麗な場所から汚れた場所へと掃除すれば、手間が少なくなる。

「何をしたって、思い出しちゃうわね」

 たったひと月しかいなかったのに、そこかしこにエリオットとの思い出が詰まっている。

 シュエットがエリオットに別れを告げて帰宅した時、もう部屋にエリオットのものはなくなっていた。

 彼の荷物のように、シュエットの記憶も忽然と消えてしまうに違いない。

 そう思いながら数日がたったが、シュエットの記憶は未だ消える気配がないままだ。