公爵様に必要なのはシュエットではなく、貴族社会に順応できるお姫様のような子なのだと。

「さようなら、エリオット。幸せになって」

 言うつもりなんてなかったのに。

 大好きな人の前では、悪役になりきれなかった。

 捕まえようとするエリオットの腕をすり抜けて、シュエットは走る。

 最終試練だからと腕輪を外してもらっていて良かった。

 そうでなかったら、こんな言い逃げはできなかっただろう。

 逃げる先なんてバレバレだから、先回りされるだろうか。

 そうしたら今度こそ手酷くフッてやるのだと、シュエットは泣きながら走った。