人付き合いが下手で、握手も満足にできない。

 家事が得意で、この頃は市場での値下げ交渉もお手の物になっている。

(そんなだから、好きになってしまうのよ。もっと貴族らしくしてくれたら、鼻持ちならないやつだって、嫌いになれたのに)

 エリオットは公爵様だけれど、シュエットの前ではどこにでもいる、ただの青年だった。

 シュエットと同じように、誰かを好きになって、大事にしたいと思って、一生懸命考えて行動するような、ごく普通の青年だったのだ。

 身分さえなければ、シュエットのことを一番に想ってくれる、かけがえのない人になったはず。

(でもエリオットは公爵様。その事実は一生、変わらない)

 出会ったばかりの頃に思った、没落貴族だったなら良かった。

 そうしたら、ミリーレデル商會の援助と引き換えに結婚することもできたし、ジンクスのことも気にせず一緒にいられたはずだ。