「わかっているわ。公爵様にあいさつしていたら、ご令嬢たちに取り囲まれてしまったのでしょう?」

「あ、ああ、そうなんだ」

 取り繕うように微かな笑みを浮かべるエリオット。

 シュエットが令嬢たちに嫉妬していると思ったのだろうか。

 弁解めいた言葉を話す彼に、シュエットは「うそつき」と言いたくなった。

(公爵様にあいさつしていたのではなくて、あなたが公爵様なのでしょう?)

 エリオットは黙っていただけ。

 おそらく、シュエットを騙そうとか、裏切ろうとか思っていない。

 だから彼は悪くない。

 悪くないけれど、責めたくなる。