「……ええ、喜んで」

 じわりと涙が滲む。

 嬉しくて泣いているのだと勘違いしてくれたら良い。

 別れを惜しんで泣いているのだと、今は知られたくない。

 シュエットは笑顔で、差し出されていた手のひらに自分の指を乗せた。

 確かめるように握られた手は、まるで大事に守られているようで余計にたまらなくなる。

 思わずヒュッと息を飲むシュエットの腰を、エリオットが支えた。

「緊張している?」

「大丈夫。エリオットがリードしてくれるのでしょう?」

「もちろん。今日はお姫様みたいな気分にさせてあげるから」

「それは楽しみね」

 迫り上がってくる涙を振り切るように、シュエットはエリオットに体を寄せる。

 鼻の奥がツンと痛んだが、彼女は気づかないふりをした。