人の流れに押されて、たたらを踏んだ。

 ぼんやりとしているうちに、舞踏の時間が始まってしまったらしい。

 ハッと我に返った時にはすでに、テンポの良いワルツが広間に流れ始めていた。

「あ……」

 ダンスの邪魔にならないように、シュエットは慌てて壁へ身を寄せた。

 飲み物を取りに行ったはずのエリオットは、まだ戻ってこない。

 公爵様と美貌の男とのあいさつを求めていた人だかりはすでに散会しているのに、だ。

 気になるなら、探しにいけば良い。行かないのは、そのつもりがないからだ。

(エリオットに会いたくない)