「ピピ」

 ヒョコリと顔を出したピピは、着飾ったシュエットを見て「ムフフ」と笑った。

「わらわが自ら手配しただけのことはある」

「ピピが手配してくれたの?」

「ああ、そうじゃ!」

 褒めて褒めてと嬉しそうに報告してくるピピに、シュエットは胸の奥にしまっていた苛立ちを飲み込んだ。

 悪気があったわけじゃない。

 むしろ、良かれと思ってやってくれたことだ。

 実際、こうして出来栄えを見れば、大成功だと言える。

(だけど……もう少し、エリオットと一緒に過ごしたかった)

 だって、今日で終わりなのだ。

 今日が、おそらく舞踏会が終われば、エリオットはヴォラティル魔導書院へ帰ってしまう。