「エリオットさん、こいつのこと、よろしく頼みますね。しっかりしているようで抜けてるし、かなり鈍感で男心なんてかけらもわからないヤツですけど、甘えるのが下手ですぐ諦めちゃうような子なんで、べったべたに甘やかして依存させちゃってください。そうでないとこいつ、たぶん逃げるんで」

「ああ……」

「んじゃ、オレは行きます。相談くらいならのれるんで、困ったことがあったらプルデネージュ料理店に来てください」

「わかった……」

「じゃあな、シュエット。休みの日にでも店に行ってやるから、うまいカフェオレ、練習しとくんだぞ」

 弟分のくせに、たまに兄のように振る舞うのに納得がいかない。あっという間に走り去ってしまったカナールに、シュエットは「もう」と呆れ混じりに呟いた。

「あの子、いつもああなのよ? 謎かけみたいなことばかり言って、答えを教えてくれないの。エリオットも、カナールの言うことなんて気にしちゃ駄目だからね?」

「ああ……」

 シュエットの声に、エリオットはぼんやりと答える。彼女の腰を抱いていた手を、エリオットは何か決心したようにギュッと握り締めた。