今はカナールとふざけていたけれど、つい今し方まではきちんと仕事をしていたのだ。

 弁解しようと出しかけた声は、しかしカナールの声に掻き消された。

「別に触ったって良いだろ? 減るもんじゃないし」

 何を思っているのか。カナールはやけに挑戦的な視線でエリオットを見ていた。

 クリクリした大きな目が、三日月のようになる。スズメを狙う猫の目のようだと、シュエットは思った。

「減るか減らないかの問題ではない。僕の気分の問題だ」

 対するエリオットも、不機嫌さを隠そうともしない。彼はシュエットが聞いたこともないような、くらくて冷たい声で答えた。

 恐ろしい声だ。シュエットへ向けられた声ではないのに、思わず震えが走る。

 反射的に引いた腰を、エリオットの腕が容赦なく引き戻した。