「あの! 触ってもいいですか?」

「ええ、もちろん!」

 人だかりから、一人の青年が寄ってくる。濃い黄色のような金の髪を、後ろでチョンと結っている青年だ。

 青年は、人だかりから見えないのをいいことに、シュエットにだけわかるようにニッと笑いかけた。

「一つ、貸しだかんな」

「わかっているわよ」

 クリクリとした大きな黒い目が、いたずらっぽく眇められる。

 寄ってきた人たちにどうやって手乗り体験をさせるか、実は悩んでいたシュエットは、青年──カナールの助けに感謝した。

「わぁ、かわいい! しかも全然痛くないんですね!」

 彼の婚約者曰く『あざとかわいい』顔でニッコリしながら、カナールはいかにも初めてラパスを触りましたといった風を装う。接客業をしているせいか、妙にうまい。