扉の向こうでは、キャアキャアと魔導書院にふさわしくない黄色い声が響いている。

 メナートのことを、ここの院長だと思っているらしい。

 彼は「何度も違うと訴えているのに、ちっとも聞いてくれない」と嘆いていた。

『一刻も早く戻ってきて令嬢の誤解を解いてください! じゃないと、引っ越しなんてできませんよ! ほら、見てください。あの令嬢のせいで余計な仕事が増えるばかり! 俺はもう、過労死寸前ですよ……』

 たった一息でここまで訴えられるなら、まだまだ大丈夫だ。

 市場で買ってきたフレッシュジュースを差し入れしてごまかしつつ、エリオットはとりあえず様子見に徹した。

「もうじき王城で舞踏会があるから、必死なのだろうな……」

 少しでも印象付けてパートナーに選んでもらいたい。そういうことなのだろう。