早々に司書室へ逃げ込んだエリオットは、事前に渡されていた資料を開いた。

 その横からヒョコリと資料を覗き込んできたピピが、内容を読み上げる。

「グリーヴ・レヴィ。占星術を得意とする魔導師を多く輩出していた伯爵家の令嬢……ふむ。なんとも奇な巡り合わせじゃの」

「どういう意味だ?」

「この娘の母親は、以前、おまえの父に懸想しておったのじゃ。いや、懸想というか執着と言うべきか」

 当時はまだ王子だったエリオットの父は、まだ結婚も婚約もしていなかった。

 次期国王ともなれば、誰も彼もがさまざまな思惑を持って近づいてくる。そんな中、特に悪質だったのがレヴィ家の令嬢だったという。

「ことあるごとにすり寄ってきて、媚を売っていた。ほれ、あの娘のようにな。婚約が発表されるまで、それはそれは大変だったのじゃ。ふむ……親娘そろってそっくりじゃな。歴史は繰り返すとはよく言うたものじゃ」

 ピピは呆れた顔でそう言って、最後にやれやれとため息を吐いた。