ピピから新たな試練を課されたエリオットは、その翌日、ヴォラティル魔導書院にいた。

 このままでは魔導書院が無事に引っ越せないと泣きついてきた、部下のメナートのせいである。

「わたくし、お手伝いいたしますわ!」

「いや、頼むから触らないでくれ」

「なにをおっしゃいますの! わたくしとあなたの仲ではございませんか」

「あなたにはまだ名を名乗ってもいないのだが?」

「名乗らなくても、わたくしにはわかります。ええ、そうですとも。わたくしとあなたは、結ばれる運命なのですから!」

 泣きついてきた当の本人は、とある令嬢に言い寄られている。「かわいそうに」とエリオットは他人事のように呟いた。

 それは一体、どちらへ向けて言った言葉なのか。

 頭が足りていなさそうな令嬢に対してなのか、勘違いで言い寄られて仕事を妨害されているメナートなのか、それとも、こんな場面を見せられている自分に対してなのか。