「リシュエル様……」

 主人を思い出して、ピピはその名を呼ぶ。

 気弱そうに見えても、結局はエリオットも王族の血筋なのだ。

 リシュエル王国は魔導師の国。とある国から追放された、悪徳魔導師が建国した国なのである。

「それなら、おまえの次の試練は決まっている。エリオットよ、愛する者を呪う不届き者を排除せよ」

「言われなくても、そうするさ」

 嫁選びの書が選んだ花嫁は生贄の花嫁と呼ばれていたが、命短し彼女たちを、伴侶となった王族たちはみな、心の底から尊敬し、愛し抜く。

 ひとたび彼女たちを害すれば、悪魔に魂を売ってでも報復するのである。