「ピピ……」

「おまえは両親から愛されていないと言っているが、エトラのまじないをする者など、限られるであろう?」

 誰にされたのだろう。

 ふと、兄ではないかという考えが浮かんだが、打ち消すように女性のシルエットが浮かぶ。

 両親に愛された記憶はない。乳母は、エトラのおまじないなど知らないだろう。

「まさか、母上が……?」

「それ以外、誰がいる」

 心底呆れたような顔をして、ピピがエリオットを睨めつけた。

 エリオットの脳裏に浮かんでいたぼんやりとしたシルエットが、くっきりと像を結ぶ。

『エリオット』

 優しい思い出の中の母は、エリオットを見て、愛しくてたまらないという顔をしていた。