実のところ、齢二十歳にしてファーストキスも済ませたことがないシュエットは、まさかの可能性に思い至ってクラクラしそうになった。

 初めてのキスは恋人と。

 そう思っていたシュエットにとって、それはとてもいけないことのように思えた。

 しかし同時に、エリオットなら良いかもという気持ちにもなってくる。

(私より動揺しているのだもの。もしも私が失敗したらどうしようと考えるより、エリオットの方が心配になってしまうわ)

「わ、かった。今日中に、どちらかすれば良いんだな⁈」

 ぼんやりと考え事をしていたシュエットの隣で、エリオットが怒鳴るようにそう言った。