シュエットは、幼いころから『三人きょうだいの一番上はうまくいかない』というジンクスを信じていて、堅実に生きることをモットーにしている。だからまさか、こんな大物と知り合いになるなんて、パングワンは思ってもみなかった。

「シュエット、おまえは……」

 もしも彼女が、エリオットのことを少なからず想っているなら。この先の未来は、彼女が望む堅実な生活とは、かけ離れたものになる。

 知っているのか? 彼のことを。

 そう言おうとしたパングワンだったが、扇子をパチンと閉じた妻に「あなた」と呼ばれて口を閉じた。

「なぁに? お父さん」

「あ、いや……」

「お父様は、あなたが一人でカフェをやっていけるか心配で仕方がないのよ。あなたはもう、大人なのだもの。やりたいことがあるなら、チャレンジしていくべきよ。それに……心強い味方もいるようだし、きっとうまくいくわ」

 シーニュの言葉に、シュエットが戸惑いを滲ませた顔でエリオットを見る。

 そんな彼女へ、優しげに微笑みかけながら「任せて」と答えるエリオットに、シーニュは安心したように穏やかな笑みを浮かべていた。