思惑通りたじろいだ男に、パングワンは腕組みしながら「それみたことか」と馬鹿にするように鼻息を吐く。

「あなた。そんな顔をしてはいけないわ。とってもこわい顔をしているわよ? シュエットに嫌われても良いなら、止めないけれど……あなた、シュエットに嫌われたら泣いちゃうでしょう?」

 悪鬼のような形相のパングワンに、たおやかな手を伸ばしたのはシュエットの母、シーニュである。

 彼女は、まるで躾のなってない犬を服従させるかのように、厳しい顔つきで夫の頬を撫でた。

 途端おとなしくなる夫に、シーニュは不穏な空気を漂わせながら「うふふ」と頷く。

「む。しかし、だな……」

 愛する妻にそのように言われては、パングワンはもうお手上げだ。

 それでも、いつもならここで白旗をあげるのに言い淀むのは、父の威厳とやらを守りたいがためだろう。

 相変わらずな両親に、シュエットは呆れたように肩を竦めた。