シュエットとの件は、まさに渡りに船だった。

 エリオットと魔導書院は、特別な魔術による契約を交わしている。

 ヴォラティル魔導書院創設時から連綿と続いてきた、王族の第二子を犠牲にすることで成り立つこの魔術の名は、鳥籠(カージュ)

 魔導書院にある全ての魔導書を鳥の姿に変え、保管し、貸し出す際には解除、戻ってきたら再び鳥の姿にする。許可なき者を魔導書院へ入れない、阻む。

 それら全ての機能を維持するために、エリオットは膨大な魔力を供給し続ける。その代わり、何人たりとも魔導書院から許可なく魔導書を持ち出すことを禁ずる、という契約だ。

 この契約は古の魔術と呼ばれるもので、禁書と同じ時代につくられたものらしい。

 化け物じみた魔力を保有していた当時の王族がつくったものだから、その効果は絶大だ。必要とする対価も凄まじいが。