普段から笑えと口うるさい彼への、意趣返しの微笑でもあったのだが、思いのほか効果があったらしい。

 いつもの機関銃のようなトークはどこへやら。

 メナートはあんぐりと口を開けたまま、間抜けな顔でエリオットを見返してくる。

「……は⁉︎ 一体、どういうことですか?」

 エリオットは、嫁選びの書がシュエットを選んだこと、これからどうなるかを大まかに話した。

 嫁選びの書が禁書だということは知っていても、その内容まで知らなかったメナートは、鋭い目をわずかに見開いて驚いているようである。

「な、なんっ⁈」

 仕事ができないわけじゃない。シュエットの協力さえあれば、たぶん可能だろう。

 だが、言わなければメナートが知る術はない。エリオットは意図的に「仕方がないことなんだ」と告げた。