メナートに荷物を預けたまま、エリオットは院長室の奥にある扉から自宅へ入った。

 部屋には、落ち着きのある青の絨毯にクロス、年季の入った飴色の木製家具が置かれている。

 シックでエレガント。公爵らしい部屋だ。

 しかし、若いエリオットには些か落ち着きすぎた雰囲気の部屋である。

 エリオットは最初の部屋を通り過ぎて、続き部屋へと進んだ。

 一つ目の部屋が応接室、二つ目の部屋が私室といったところだろうか。

 続き部屋も、同じような雰囲気だ。エリオットの私室だというのに、彼が住んでいる気配がまるでしない。家具ごと貸し出された部屋をそのまま使っているような、そんな雰囲気である。

 唯一彼らしさを感じるのは、作りつけの本棚におさめられた本くらいだ。