たった一日離れただけで、見放されたような気になってしまうのは、ここがエリオットにとって唯一の居場所だからだろう。

 彼にとってヴォラティル魔導書院とは、存在意義なのだ。

 出入り口から追い立てられるように、何人かの魔導師たちが出て来る。

 目当ての魔導書を借りられなかったのか、魔導師たちは一様に、不機嫌な顔をしていた。

 エリオットとシュエットは、魔導師たちと入れ違いになるように魔導書院の中へ入る。

 入った瞬間、シュエットは「わぁ」と声を上げて立ち止まった。

 見渡す限り、木が生えている。

 あっちにもこっちにも、木、木、木! さまざまな色合いの木々が組み合わされたヘリンボーンの床の上に、大きな木が根を張っている。

 地面でもないところに木が生えているというのは、なんとも不思議な光景だ。

 伸ばされた枝には、たくさんの鳥たちが思い思いにとまっていた。