ちょっと、なんてものじゃない。

 普段は首までピッチリ着込んでいる人が、胸元が微かに見えるまでボタンを開けているなんて、エリオットからしてみたら大問題である。

 ギュッと、顔をしかめるほどかたく目を閉じたエリオットに、シュエットは「大袈裟ね」と呆れまじりのため息を吐いた。

 母もそうだが、貴族というのは本当に頭がかたい。これくらい、妹たちなら当たり前のようにしている。むしろ、シュエットにもそうするように注意してくるくらいなのに。

 貴族でも年頃の娘はこれでもかと胸を強調するドレスを着るものだが、シュエットは知らない。

 まさかエリオットがシュエットだから過剰な反応をしているのだと、思いもしなかった。

 それでも、相手が貴族ならその反応も当然かと勝手に納得して、シュエットは手早くボタンをつける。