家すらないのだろうか。

 そう考えると、なんだかエリオットがかわいそうに思えてくる。

 実家は没落気味、家もなく魔導書院暮らし。その上、手違いで禁書の魔術が発動して、シュエットのそばを離れられなくなるなんて。

(長女の私よりついてない)

 聞けば、二人兄弟の二番目なのだとか。自分とは違うのだと知って、ホッとする。

 レーズンパンを食べ終えてカップに口をつけるエリオットをこっそり盗み見ながら、シュエットはうーんと悩んだ。

(伯爵なら間違いなくリシュエル学園へ通うから、男爵……いえ、子爵かしら?)

 客商売をしているせいか、どうにも深読みしたくなってしまう。