ヴォラティル魔導書院では、魔導書を鳥の姿にすることで持ち出しにくくしている。

 無断で持ち出そうとすれば、魔導書がけたたましく鳴き叫ぶ、というわけだ。

 禁書と呼ばれる三冊の魔導書は、絶対に使用してはいけない、そして持ち出してはいけない代物なのだが、一カ月後に迫った魔導書院の引っ越しの準備の最中、手違いで逃げ出してしまったらしい。

 逃げ出した禁書の名前は、嫁選びの書。

 結婚相手を斡旋する魔導書で、ひとたび魔術が発動すると、どんな強大な魔力を保有する魔導師も逃げることはかなわない、強制力を持っている。

 本来魔導書とは、書に書かれた術式を実行することではじめて発動するわけだが、三冊の禁書は例外だった。