恋の始まりはいつだって唐突に


私、てっきり……。


とんでもない勘違いに顔が熱くなる。


あぁ、そういうこと。そうだよね、別に掛井さんは普通に帰られるわけだし。別に一緒に泊まる理由なんてないもんね。

そもそも、私と掛井さんがそんなこと。



ぐるぐると頭の中を駆けていく言葉に、つい黙ってしまう。


そんな私を見て、クスリと笑った。





「一緒がいいなら、泊まるけど?」





その言葉に、完全に頭の中がショートした。




「いやっ、1人で大丈夫です!」

「そうか、残念だな」



もう何を言ってるの!


きっとからかっているだけだ。こういうのに慣れていない私を見て、面白がっているんだ。そうに違いない。



にしてもだ。


ただの上司とはいえ、心臓に悪いのはたしかで。


お酒が入っているせいか、いつもよりフランクな掛井さんに戸惑っているのに。こんな冗談、本当にやめてほしい。

それより。



「掛井さん、いくらでしたか?さすがにここまで出してもらうのは気が引けます」

「いいって言ったろ」

「でも、やっぱり」

「気にしなくていいから」

「でも、上司にここまでしてもらうのは、」