二月五日(同棲二日目)
朝、目が覚めるとまだ部屋の中は暗かった。
しかし、そこは明らかに築三十年ボロアパートの自分の部屋ではなかった。
すぐに昨日のことを思い出し、すべてが現実に起きたことだったのだと落胆した。
壁時計で時間を確認しようも、暗くて判別できない。
枕元に置いていたスマホを付けて時間を確認すると、朝の五時半を回ったところだった。
いつもならこんな時間に起きることはないが、昨日は就寝時間がいつもより三時間も早かったせいか、もう眠たくはなかった。
さすがに早朝から家の中をウロウロすると家主に迷惑がかかるので、スマホで「火事 家」などと調べて今後のための情報収集に励むことにした。
三十分ほど経ったとき、部屋の外から物音がした。奏が起きてきたのだろう。そういえば彼は今日も仕事があるはずだ。
布団から起き上がり、キッチンに向かうと奏が立っていて、朝食の準備でもしようというところだった。
「おはよう、よく眠れた?」
「おはよ。お陰様でね」
真琴もキッチンの横に並び、一緒に朝食の準備を始めた。
「奏は仕事に行くでしょ。私はいろいろ揃えないといけないものや手続きがあるから、しばらく会社を休むつもり。今日は必要な服を買いに行くから家を空けるね」
「僕もついていくよ」
「え?」
「仕事より真琴を優先したいんだ。それに荷物だって多くなるんだから、手伝うよ」
「……」
やはりこの男の執着に理解できず、心の中でいつもの警告音が響き始めた。
しかしまあ、荷物持ちがいるのは買い物をする側にとっては有難いことだと思ったので、今日のところは好きにさせることにした。
会社の始業時間になり、真琴は自分の会社に連絡し、昨日の顛末を話した。
さすがに上司も同情してくれ、ひとまず一週間の休みを勝ち取った。足りないようならまだ伸ばしても良いという気遣いも得た。
元の生活を取り戻すために、収入源がなくなるわけにもいかないので、臨機応変に対応してくれる会社には感謝の気持ちでいっぱいだ。
また、念のため両親にも報告の電話をしておく。
奏の名前は出したくなかったので、知人の家に居候させてもらうということだけを伝え、体には大事ないということを伝えると、両親も安心していた。
そして昼頃には奏と一緒に繁華街に出て、お馴染みの洋服店へと足を運んだ。
住む部屋を用意してもらったとはいえ、下着も部屋着も私服もない状態では困る。
今後の出費を考えて、必要最低限だけを買おうと思ったが、予想以上に荷物が多くなってしまった。
正直、荷物持ちを連れてきてよかったと思うが、その場に奏の姿はなかった。というのも、買い物している間に自分の好みを主張してきたり、馴染みの店員に彼氏と間違われるのが癪で、途中からは彼を別の場所に待機させていた。
朝、目が覚めるとまだ部屋の中は暗かった。
しかし、そこは明らかに築三十年ボロアパートの自分の部屋ではなかった。
すぐに昨日のことを思い出し、すべてが現実に起きたことだったのだと落胆した。
壁時計で時間を確認しようも、暗くて判別できない。
枕元に置いていたスマホを付けて時間を確認すると、朝の五時半を回ったところだった。
いつもならこんな時間に起きることはないが、昨日は就寝時間がいつもより三時間も早かったせいか、もう眠たくはなかった。
さすがに早朝から家の中をウロウロすると家主に迷惑がかかるので、スマホで「火事 家」などと調べて今後のための情報収集に励むことにした。
三十分ほど経ったとき、部屋の外から物音がした。奏が起きてきたのだろう。そういえば彼は今日も仕事があるはずだ。
布団から起き上がり、キッチンに向かうと奏が立っていて、朝食の準備でもしようというところだった。
「おはよう、よく眠れた?」
「おはよ。お陰様でね」
真琴もキッチンの横に並び、一緒に朝食の準備を始めた。
「奏は仕事に行くでしょ。私はいろいろ揃えないといけないものや手続きがあるから、しばらく会社を休むつもり。今日は必要な服を買いに行くから家を空けるね」
「僕もついていくよ」
「え?」
「仕事より真琴を優先したいんだ。それに荷物だって多くなるんだから、手伝うよ」
「……」
やはりこの男の執着に理解できず、心の中でいつもの警告音が響き始めた。
しかしまあ、荷物持ちがいるのは買い物をする側にとっては有難いことだと思ったので、今日のところは好きにさせることにした。
会社の始業時間になり、真琴は自分の会社に連絡し、昨日の顛末を話した。
さすがに上司も同情してくれ、ひとまず一週間の休みを勝ち取った。足りないようならまだ伸ばしても良いという気遣いも得た。
元の生活を取り戻すために、収入源がなくなるわけにもいかないので、臨機応変に対応してくれる会社には感謝の気持ちでいっぱいだ。
また、念のため両親にも報告の電話をしておく。
奏の名前は出したくなかったので、知人の家に居候させてもらうということだけを伝え、体には大事ないということを伝えると、両親も安心していた。
そして昼頃には奏と一緒に繁華街に出て、お馴染みの洋服店へと足を運んだ。
住む部屋を用意してもらったとはいえ、下着も部屋着も私服もない状態では困る。
今後の出費を考えて、必要最低限だけを買おうと思ったが、予想以上に荷物が多くなってしまった。
正直、荷物持ちを連れてきてよかったと思うが、その場に奏の姿はなかった。というのも、買い物している間に自分の好みを主張してきたり、馴染みの店員に彼氏と間違われるのが癪で、途中からは彼を別の場所に待機させていた。
