昴が帰国して2ヶ月経った。相変わらず彼はホテル暮らしだ。朝と夜は樹莉と希柚に会いにくる。しかし仕事の都合もあり、毎日とはいかない。

 ただ、樹莉は以前昴と話した通り、土日のどちらかにシフトをいれるようになった。おかげで平日に昴とゆっくりとした時間を過ごせている。

 昴は絶賛娘に好かれようキャンペーン実施中だ。平日に休みがあるということはひとりで過ごす時間ができる。そして昴は娘と二人きりで過ごす時間を増やしたい。まことにWin-Winだ。樹莉は平日にひとりでのんびりする時間を作れるようになった。

 おかげで改めて家族の在り方を考えた。そして契約のことも考える。昴がいて希柚がいる。傍目からみれば仲のいい家族だ。一緒に住んでいないのは契約上別居婚が前提だからだ。これは昴の要望ではあるが、樹莉の契約に至る前の前提条件。夫は一年のほとんどを外国にいるならと契約に合意した。

 この2ヶ月の間に昴が契約内容の変更を求めた。しかし、樹莉は頷いていないので現行のまま契約が履行中。今のところ特に大きな問題もなくやれているが時々希柚に「パパはまだ一緒に住まないの?」と訊ねられることが辛い。

 大人の事情だと言っても、この年齢の子どもにはよくわからないだろう。それを諭すことが正直大変だった。

 それ以外特に不満はない。昴は希柚の前ではいい父親であろうと頑張ってくれる。樹莉が休日のどちらかが仕事の場合は希柚とふたりでデートだと遊び回っているらしい。そして仕事が終わる頃を見計らって職場に顔を出す。もう同僚たちも慣れたもので樹莉の職場ではちょっとした名物になっていた。