おそらく、ブレイブが私のことを頼んだシスターだろう。

 振り向くと、物腰柔らかな白髪の老婆が、優しげな笑みを浮かべて私を見つめている。
 彼女は目線を私の高さに合うように腰を屈めると、ゆっくりとはっきりとした声で話しかけてくる。

「大変でしたねぇ。主は、私たちに様々な試練を与えます。でも、安心してください。主を信じ、祈り続ければ道は開けますよ」
「は、はぁ……それはどうも……」

 彼女は胸の位置で両手を組むと、主への祈りを捧げた。
 私も彼女にならって両手を組む。

「それでは、色々と不便なこともおありになるでしょうが、今日からこの教会を我が家と思って過ごしてくださいね」
「ありがとうございます……」

 聖女の私が言うのはなんだけれど、彼女は典型的なシスターのようだ。
 苦難や問題は主の試練、良いことが起これば主の思し召し。

 嫌いではないけれど、外の世界を知ってしまった私としては、少し、いいえ、かなり窮屈に感じてしまう。
 この幼女の状態が治るのか、どのくらいかかるのかは分からないけれど、ずっとここで生活する気にはなれない。