やろうと思えばこの祈りは省略もできるのだけれど、私が回復魔法を使う時の習慣になっているので、やらないと違和感がある。

 私が回復魔法を使えるのは慈母神マーネスの力をお借りしているだけだから、祈りを捧げるのは礼儀でもあると思う。
 それに、祈ってからやった方が、ご利益がありそうだしね。

 回復魔法を聖獣に使ってあげたおかげで、荒かった吐息がなくなり、聖獣の顔から苦悶の表情が消えた。
 魔獣でも普通の獣でも、表情豊かだと私は思うんだけど、それをファイに言ったら笑われたっけ。
 くー! ファイ、許すまじ!!

『馬鹿な!? 神獣である我に人間が扱うレベルの回復魔法が効くはずなど!? 貴様、いや……お主は何者だ?』
「え!? 聖獣さんじゃなくて神獣様!?」

 私は慌てふためいて、その場で頭を垂れる。
 ひゃー!! 神様だよ! びっくりだね!!

 ちなみに、聖獣も十分尊い存在なんだけど、神の冠する神獣は別格。
 もちろん神の位である神格というものがあるけど、人間である私が気軽に話しかけていい存在ではないのは確かだ。