走りながら、ブレイブが心の叫びを口に出す。

「くそっ! 間に合ってくれ!!」

 それに呼応するように、息を切らしながら、ザードも声を漏らした。

「あの……町は……祭りの最中ですから……! 今魔獣に襲われたら……酷い被害に!!」
「あの野郎! 去り際に嫌な置き土産を残しやがって!!」

 ブレイブたちが洞窟で出会ったのは、今までの主とは格が違うと呼べるような魔族だった。
 悪戦苦闘の末、なんとか討伐、いや、相手の逃走までこぎ着けた。

 魔獣も魔族も、根城にする場所には一定の決まりを作っているようで、一度その場から逃げ出した根城に再び戻ることはない。
 討伐自体はできなかったが、町の近くから魔獣の脅威を退けるという意味では成功だった。

 ところが……

「洞窟の外に待機させてあった魔獣を町に向かわせるなんて!」

 ブレイブたちが主である魔族と相対した際、魔族は自分のことを多くは語らなかったが、ブレイブたちに強い興味を示した。
 そして、言い放った一言に、ブレイブたちは激怒する。