なんでそんなものをザードが持っているのか知らないけれど、くれるというのならもらっておこう。

 うん。甘い。
 すっきりした甘さに、思わず笑顔になる。

 あれ?
 なんかザードもほっこりした顔をしているように見えるけど……

「まぁまぁ。ザード。お小言はそれにくらいにしろよ。それよりもブレイブ。これ……どうすんだ?」

 ザードの次に口を開いたのはファイ。
 攻守ともに最前衛を安心して任せられる偉丈夫で、短く刈りそろえた焦茶色の髪と、鋭い灰色の目つきが特徴的だ。

 並み居る王国の騎士たちを押しのけて、見事ブレイブと一緒に魔王討伐の旅を共にすることを許されたブレイブの幼馴染でもある。
 その鍛え抜かれた筋肉を自慢してくる様は、正直言って少しうざい。

 しかし子供たちにはめっぽう人気で、訪れた街や村の子供たちに一番最初に懐かれるのはいつもファイだ。
 何故だか知らないけれど、今日は妙にファイのことがかっこよく見えるから不思議だ。

「どうするって言っても……このまま連れていったら、流石にまずいだろ?」
「だよな……最悪、虐待だって石投げられるぜ」