ちょっと、勢いをつけすぎたかもしれない……

「わ、私が悪いんじゃないわよ!! ちょっとこの槌、重すぎるのがいけないんだから!!」

 誰に言っているのか自分でも分からないけれど、ひとまず言い訳はしておこう。
 もしかしたらおねえさんが聞いてくれているかもしれない。

 そう思って、笑顔を作ってからおねえさんの方を振り返る。
 すると、「ひゅっ!!」という息を吸い込む音が聞こえ、まるで怯えたような素振りを見せるおねえさんの姿があった。

「あ……柱に完全に隠れたし……」

 何故か驚かせてしまったようだ。
 いけない、いけない。少し力加減を考えないと。

「まぁいいわ。とりあえずはバイソーたちをやっつけないとね! やー!!」

 破城槌を抱えたまま、私は次に近くにいたバイソーにそのまま体当たりをする。
 破城槌にぶつかった瞬間、まるで重量がないかにように、バイソーは吹っ飛んでいった。

「次!!」

 家屋に体当たりを繰り返し行っているバイソーには、上から下に破城槌を打ち付ける。
 超重量物に押しつぶされ、通算四匹目のバイソーも息絶えた。

 さすがにそこまでやると、バイソーたちも誰が危険なのか気づいたようで、一斉に私の方を振り向き、威嚇を始めた。

「あらー? ようやく私の凄さに気づいたってところ? 馬鹿な魔獣にも少しは考える頭があるのね!」
「あ……馬鹿って言った……」

 ……おねえさんの声が聞こえた気がしたけれど、気のせいだろう。うん。
 私はいいの! と心の中で叫びながら、すぐに対応できるように破城槌を構えた。