第6話
「えーい‼︎」

 先頭のバイソーが思いがけずやられたせいなのか、群れは戸惑っているようにその場を動かずにいた。
 その群れの新しい先頭の一頭に向かって、私は握りしめた拳を振りかぶり――

 盛大に空振りをした。

「あぁ! 私のおててが小さすぎるし、腕も短すぎる‼︎」

 未だに幼女になったことに慣れておらず、距離感が狂っていた。
 突き出した可愛らしい傷一つないすべすべとした拳は、狙ったバイソーの脚のかなり前で止まっていたのだ。

「そもそも、相手がデカすぎる! 顔を殴れば一発なのに、届かないじゃない!」

 先ほどのバイソーは、私を角で串刺しにをしようと、頭を地面すれすれに下げた状態で突進してきていた。
 そのおかげで、小さくなってしまった私でも、届くことができた。

 今一瞬、ファイの顔で、「アリシアは元から小さいだろ」と言うのが聞こえた気がしたけれど、幻聴だろう。
 流石の私でも今の幼女姿の私よりは大きかったもんね!

「はっ⁉︎ 関係ないことをついつい考えてしまっていたわ。それにしてもどうしましょう。何度やってもあいつら意外とすばしっこくて攻撃が届かない……」

 別のことを考えている間も、私は果敢にバイソーに向かって攻撃を繰り出していた。
 しかし、いくら攻撃しても、腕の長さの不利が災いし、一度も攻撃を当てることができない。

「あー、もう! なんか長くておっきいものがあればいいのに! あ、そういえば……」

 私はふと目線を広場の中央に向ける。