「魔獣だ‼︎ 魔獣が群れになって襲ってきたぞー‼︎」

 初めは何ごとかと興味深そうに声のする方を見ていた人たち。
 そんな人たちは、町に向かって迫ってくる土ぼこりに気がつき、一斉に悲鳴を上げながら散り散りに逃げ出した。

 私は逃げ惑う人々の波に、飲み込まれないよう、逆行するように土ぼこりが近づいてくる方向へと駆けていく。
 既におねえさんと繋いでいた手は振りほどいていた。

「ちょっと‼︎ 何処へいく気⁉︎ そっちは危険よ‼︎ 戻って来なさい‼︎」

 遥か後方から、おねえさんの叫び声が聞こえる。
 もちろんそんなものは無視だ。

「あんたたち‼︎ いったい何処から来たか知らないけれど、ここから先は通さないわよ!!」

 私は誰もいなくなった広場に一人立ち、迫り来る魔獣たちに向け吠えた。
 魔獣たちは何としてでもここで食い止めないといけない。